「夫が亡くなり、前妻との間に子どもがいる。トラブルにならないか不安…」 このようなご家庭において、遺言書は残されたご家族を守るための強力な武器になります。
しかし、「遺言書さえあれば100%安心」というわけではありません。一定の相続人には「遺留分(いりゅうぶん)」という最低限の財産を受け取る権利が法律で保障されているからです。
今回は、遺言書があったことで前妻の子から遺留分を請求されたものの、結果的に「不動産を守り、最小限の負担で早期にトラブルを終わらせることができた」という当事務所の事例(※プライバシー保護のため一部改変)をご紹介します。
被相続人: 夫
相続人: 妻(後妻)、妻との子、前妻との子
遺産の内容: 自宅不動産のみ
遺言書: 「妻に全ての財産を相続させる」旨の自筆証書遺言あり
ご主人は生前、今の奥様を守るために「妻に全てを相続させる」という自筆証書遺言を残されていました。現在の奥様との間のお子様は、この遺言内容に完全に納得されていました。
しかし、問題となったのは「前妻との子」です。
遺言書の内容を知った前妻のお子様から、「自分には遺留分があるはずだ」と権利を主張する連絡が入りました。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に保障された最低限の取り分です。今回のケース(※お子様が合計3名いるケース)で計算すると、前妻のお子様の遺留分は以下のようになります。
本来の法定相続分:1/6
遺留分(法定相続分の半分):1/12
前妻のお子様は、「幼い頃に別れてから、自分は父親から全然かわいがってもらえなかった」という深い恨みと感情的なしこりを抱えていらっしゃいました。
そのため、遺産が自宅不動産のみであったにもかかわらず、不動産の正当な評価額から計算される1/12を大きく超える金額を「遺留分」として強く要求してきたのです。
法律上は、不動産の適正な評価額をもとに計算した金額を支払えば足ります。しかし、残された奥様と現在のお子様は、次のような決断を下しました。
「これ以上、相手と関わりたくない。少し多めに払ってでも、要求された金額を支払って早く関係を終わらせよう」
裁判等で適正な金額を争うこともできましたが、それには長い時間と精神的なストレス、そして弁護士費用がかかります。「手切れ金」として相手が納得する金額を支払い、今後の縁を完全に切るという道を選んだのです。これにより、無事にトラブルは終結しました。
相手の言い値で払ったと聞くと「損をした」と感じるかもしれません。しかし、専門家の視点から見ると、「遺言書があったからこそ、この程度の支払いで済んだ(被害を最小限に抑えられた)」と言えます。
もし、遺言書がなかったらどうなっていたでしょうか?
遺産分割協議が必要になり、不動産が凍結される 遺言書がない場合、前妻の子を含めた全員で「誰がどの財産を相続するか」のハンコ(実印)を押す必要があります。前妻の子が拒否すれば、自宅の名義変更すらできず、売却もできなくなります。
要求される金額が「倍」になっていた 遺言書がなければ、前妻の子は遺留分(1/12)ではなく、本来の法定相続分(1/6)を主張できます。つまり、金銭的にも2倍の要求を突きつけられていた可能性が高いのです。
遺言書があったおかげで、奥様はすぐに自宅を自分の名義にすることができ、前妻の子との争いを「単なるお金の支払い(金銭債権)」だけの問題に封じ込めることができました。
前妻との間にお子様がいらっしゃる場合、どれだけ時間が経っていても、相続発生時には必ず連絡を取らなければなりません。そして、過去の感情的な対立から、今回のように強い主張を受けるケースは非常に多いのが現実です。
「遺言書は、トラブルをゼロにはできなくても、残された家族へのダメージを最小限に食い止める強力な防波堤になる」
この事例は、その事実を如実に物語っています。 「自分に万が一のことがあったら、今の家族はどうなるだろう?」と少しでも不安に思われた方は、手遅れになる前に、ぜひ瀬戸司法書士事務所までご相談ください。状況に合わせた最適な生前対策(遺言書の作成サポート等)をご提案いたします。
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